この記事では、消防関係法令の乙種第四類に関する部分のうち、自動火災報知設備の設置基準などについて解説していきます。
学習ポイント
- 防火対象物の全体に自動火災報知設備を設置しなければならない基準
- 防火対象物の階または部分に自動火災報知設備を設置しなければならない基準
自動火災報知設備の機能と設置基準
自動火災報知設備とは、火災により発生する炎や熱、煙を感知器で検知し、受信機や音響装置を鳴動させて防火対象物内に火災の発生を報知する設備のことです。
自動火災報知設備の構成と機能
基本的な構成と主な機能は以下のとおりです。
構成設備 | 機能 |
受信機 |
自動火災報知設備の主装置で、感知器や発信機からの火災信号を受信すると、主音響と地区表示により、火災の発生とその場所を管理者に知らせるとともに、建物内に設置された地区音響装置を鳴動させ、火災の発生を報知します。 |
感知器 | 炎・熱・煙を自動で感知し、火災信号を受信機に送信する |
発信機 | 火災発見者が手動でボタンを押し、火災信号を受信機に送信する |
中継器 | 感知器や防排煙などの端末と受信機間のやりとりを中継する |
音響装置 | 火災の報知などを行う |
自動火災報知設備の設置基準
自動火災報知設備を設置しなければならない対象は、用途・延べ面積・階数。部分など、消防法施行令で細かく規定されています。
延べ面積に応じて防火対象物全体に自動火災報知設備の設置が必要な場合
令別表第一のうち、以下の基準を満たす防火対象物については、防火対象物全体に自動火災報知設備を設置しなければなりません。
延べ面積による基準 | 項別 | 防火対象物の用途等 | |
延べ面積にかかわらず設置 (令21条1項1号) |
(2) | 二 | カラオケボックス、インターネットカフェなど個室を営む店舗 |
(5) | イ | 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの | |
(6) | イ | (1)~(3) 病院、入院・入所施設を有する診療所・助産所 | |
ロ | 自力避難困難者入所施設 | ||
ハ | 入居・宿泊施設を有する社会福祉施設等 | ||
(13) | ロ | 飛行機又は回転翼航空機の格納庫 | |
(17) | 重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡 | ||
延べ面積200㎡以上 (令21条1項2号) |
(9) | イ | 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの |
延べ面積300㎡以上 (令21条1項3号) |
(1) | イ | 劇場、映画館、演芸場または観覧場 |
ロ | 公会堂または集会場 | ||
(2) | イ | キャバレー、カフェ、ナイトクラブその他これらに類するもの | |
ロ | 遊技場またはダンスホール | ||
ハ | 性風俗関連特殊営業を営む店舗 | ||
(3) | ロ | 飲食店 | |
(4) | 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗または展示場 | ||
(6) | イ | (4) 入院・入所施設を有しない診療所・助産所 | |
二 | 幼稚園または特別支援学校 | ||
(16) | イ | 複合用途防火対象物のうち、その一部が特定防火対象物の用途に供されているもの | |
(16の2) | 地下街 | ||
延べ面積500㎡以上 (令21条1項4号) |
(5) | ロ | 寄宿舎、下宿または共同住宅 |
(7) | 小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校その他これらのに類するもの | ||
(9) | ロ | (9)項イに掲げる公衆浴場以外の公衆浴場 | |
(10) | 車両の停車場又は船舶若しくは航空機の発着場 | ||
(12) | イ | 工場または作業場 | |
ロ | 映画スタジオまたはテレビスタジオ | ||
(13) | イ | 自動車車庫又は駐車場 | |
(14) | 倉庫 | ||
延べ面積が500㎡以上で、かつ、防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が300㎡以上 |
(16の3) | 準地下街 | |
延べ面積1000㎡以上 |
(11) | 神社、寺院、教会その他これらに類するもの | |
(15) | (1)項~(14)項に該当しない事業場 | ||
延べ面積にかかわらず設置 |
- | 特定一階段防火対象物 | |
指定可燃物を危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の500倍以上貯蔵し、または取り扱うもの |
- | 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物その他の工作物 |
防火対象物のうち部分的に自動火災報知設備の設置が必要な場合
令別表第一のうち、以下の基準を満たす防火対象物については、部分的に自動火災報知設備を設置しなければなりません。
床面積等の基準 |
項別 | 階・部分・防火対象物の用途等 | |
地下街のうち、右の用途部分について床面積にかかわらず設置 (令21条1項9号) |
(2) |
イ |
カラオケボックス、インターネットカフェなど個室を営む店舗 |
(5) |
イ |
旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの |
|
(6) |
イ |
(1)~(3) 病院、入院・入所施設を有する診療所・助産所 |
|
ロ |
自力避難困難者入所施設 |
||
ハ |
入居・宿泊施設を有する社会福祉施設等 |
||
床面積100㎡以上の地階・無窓階 (令21条1項10号) |
(2) |
イ |
キャバレー、カフェ、ナイトクラブその他これらに類するもの |
ロ |
遊技場またはダンスホール |
||
ハ |
性風俗関連特殊営業を営む店舗 |
||
(3) |
イ |
待合、料理店その他これらに類するもの |
|
ロ |
飲食店 |
||
床面積300㎡以上 (令21条1項11号) |
- | 令別表第一に掲げる建築物の地階、無窓階または3階以上の階 | |
床面積400㎡以上の部分(屋上部分600㎡以上) (令21条1項12号) |
- | 令別表第一に掲げる建築物の防火対象物の道路の用に供される部分 | |
床面積200㎡以上 (令21条1項13号) |
- | 令別表第一に掲げる防火対象物の地階または2階以上の階のうち、駐車の用に供する部分の存する階 | |
床面積にかかわらず設置 (令21条1項14号) |
- | 令別表第一に掲げる防火対象物の11階以上の階 | |
床面積500㎡以上 (令21条1項15号) |
- | 令別表第一に掲げる防火対象物の通信機器室 | |
危険物製造所等 (危険物政令21条) |
- | 指定数量の倍数が10以上の製造所等 |
危険物の製造所等に自動火災報知設備の設置が必要な場合
指定数量の倍数が10以上の以下の製造所等では、自動火災報知設備その他の警報設備を設置しなければなりません。
製造所等 | 設置基準の概略 |
製造所 一般取扱所 |
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屋内貯蔵所 |
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屋外タンク貯蔵所 | 岩盤タンクに代わるもの |
屋内タンク貯蔵所 |
タンク専用室が平屋以外の以下の建築物
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給油取扱所 |
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自動火災報知設備の設置を省略できる場合
非特定防火対象物に、以下のいずれかの消防用設備を設置した場合は、その消防設備の有効範囲に限り、自動火災報知設備の設置を省略することができます。
- スプリンクラー設備(総務省令で定める閉鎖型スプリンクラーヘッドを備えているものに限る)
- 水噴霧消火設備
- 泡消火設備