この記事では、消防関係法令の各類に共通する部分のうち、防火管理制度と防炎規制のほか、危険物取扱施設等について解説していきます。
学習ポイント
- 防火管理者および防火対象物点検が必要な防火対象物
- 防炎規制の対象となる防火対象物や主な物品
- 危険物取扱施設の種類と設置許可および危険物取扱者
防火管理
多数の者が出入り、勤務または居住する防火対象物の管理権原者は、一定の資格を有する者から防火管理者を選任し、防火管理を実行するために必要な「防火管理に係る消防計画」を作成させ、計画に基づいて防火管理上必要な業務を行わせることが義務付けられています。
防火管理者
防火管理者とは、消防法に基づいて、防火に関する講習会の課程を修了した者等一定の資格を有し、防火対象物の管理権原者から選任され、その防火対象物の防火上の管理を行なう人です。
消防法施行令において防火管理者は、「当該防火対象物において防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的または監督的な地位にあるもの」としています。
防火管理者を定めなければならない防火対象物
防火管理者の選任基準は、防火対象物の用途および出入り、勤務または居住する人数(収容人員)によって定められています。
防火対象物 | 要件 |
(1)自力避難困難者入所施設 | 収容人員10人以上 |
(2)特定防火対象物 ※(1)を除く | 収容人員30人以上 |
(3)非特定防火対象物 | 収容人員50人以上 |
(4)一定規模以上の新築工事中の建築物 | |
(5)甲板数が11以上の建造中の旅客船 |
同一敷地内に管理権原者が同じ防火対象物が2つ以上ある場合は、それらを1つの防火対象物とみなして収容人員を算出します。
防火管理者の責務
防火管理者を定めなければならない防火対象物の管理権限者は、防火管理者を選任し以下の業務を行わせることが義務付けられています(法8条1項)。また、防火管理者にも以下の業務を行うことが義務付けられています(令3条の2)。
- 防火管理に係る消防計画の作成および届出
- 消防計画に基づく消火、通報および避難の訓練の実施
- 消防用設備、消防用水または消火活動上必要な施設の点検および整備
- 火気の使用または取扱いに関する監督
- 避難または防火上必要な構造および設備の維持管理
- 収容人員の管理
- その他防火管理上必要な業務
統括防火管理者
1つの防火対象物に複数のテナントが入居しているなどして、管理権原者が複数に分かれている防火対象物では、それぞれに選任される防火管理者のほかに、防火対象物の全体について、防火管理上必要な業務を統括する防火管理者を、協議して定めなければなりません。
統括防火管理者を定めなければならない防火対象物
防火対象物 | 要件 |
(1)高さ31mを超える高層建築物 | すべて |
(2)自力避難困難者入所施設 | 地階を除く階数が3以上で、収容人員10人以上 |
(3)特定防火対象物 ※(2)を除く | 地階を除く階数が3以上で、収容人員30人以上 |
(4)複合用途の非特定防火対象物 | 地階を除く階数が5以上で、収容人員50人以上 |
(5)地下街 | 消防長または消防署長が指定するもの |
(6)準地下街 | すべて |
統括防火管理者の責務
統括防火管理者は、以下の業務を行うことが義務付けられています。(令4条の2)
- 防火管理に係る消防計画の作成および届出
- 消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施
- 防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設の管理
- その他当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務
防火対象物点検
防火対象物点検とは、「防火対象物点検報告制度」に基づいて行われる点検で、消防設備などのハード面を点検する消防設備点検に対し、防火対象物の防火管理が適切に行われているか、主にソフト面について以下の項目などの点検を行います。
- 防火管理者を選任しているか
- 防火戸の閉鎖に障害となるものが置かれていないか
- 避難施設に避難の障害となる物が置かれていないか
- 消火・通報・避難訓練を実施しているか
- カーテン等の防炎対象物品に防炎性能を有する旨の表示が付けられているか
- 消防法令の基準による消防設備等が設置されているか
防火対象物定期点検報告
防火対象物点検制度では、以下の防火対象物の管理権原者に原則として年1回、防火対象物点検資格者に防火管理上必要な業務などについて点検させ、その結果を消防長または消防署長に報告することを義務付けています(消防法第8条の2の2)。
点検報告義務の有無 | 収容人員 |
点検報告義務はない。 | 10人未満 |
次の1および2に該当する場合は点検報告義務がある。
|
10人以上30人未満 |
次の1および2に該当する場合は点検報告義務がある。
|
30人以上300人未満 |
特定防火対象物(準地下街を除く)には報告義務がある。 | 300人以上 |
特定一階段等防火対象物
特定一階段等防火対象物とは、地階もしくは3階以上の部分に特定用途部分があり、かつ、避難に使用する階段が屋内に1つしかない防火対象物のことです。
防火対象物点検報告が必要な防火対象物
防火対象物点検報告が必要でない防火対象物
防炎規制
防炎規制とは、不特定多数の人が集まる場所や高層建築物の中で使用される繊維製品等(カーテン、じゅうたん、暗幕・どん帳、工事用シートなど、火災発生時に延焼拡大の原因となるおそれのあるもの)を消防法で規制することです。
防炎防火対象物
防炎規制を受ける防火対象物は、以下のとおりです。
種別 取り扱い可能な危険物 甲種危険物取扱者 すべて 乙種危険物取扱者 第一類から第六類のうち、免状に指定された類の危険物 丙種危険物取扱者 第四類危険物の一部のみ(ガソリン・灯油等) 種別 取り扱い可能な危険物 甲種危険物取扱者 すべて 乙種危険物取扱者 第一類から第六類のうち、免状に指定された類の危険物 丙種危険物取扱者 第四類危険物の一部のみ(ガソリン・灯油等) 種別 取り扱い可能な危険物 甲種危険物取扱者 すべて 乙種危険物取扱者 第一類から第六類のうち、免状に指定された類の危険物 丙種危険物取扱者 第四類危険物の一部のみ(ガソリン・灯油等) 種別 取り扱い可能な危険物 甲種危険物取扱者 すべて 乙種危険物取扱者 第一類から第六類のうち、免状に指定された類の危険物 丙種危険物取扱者 第四類危険物の一部のみ(ガソリン・灯油等)
防炎物品
防炎規制の対象となる物品には、以下のものがあります。
- カーテン
- 布製のブラインド
- 暗幕
- じゅうたん等
- 展示用の合板
- どん帳
- 舞台において使用する幕
- 舞台において使用する大道具用の合板
- 工事用シート
防炎表示
消防法では、防炎表示をしたものでなければ防炎物品として販売し、販売の目的で陳列することが禁止されています。防炎防火対象物で、上記の物品を使用する場合は、防炎性能の基準を満たしていることを示す、防炎ラベルが付いた物品でなければなりません。
危険物
危険物とは、消防法において「別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう」(法2条7項)と定義され、一般的に次のような性質を持った物品のことで、消防法別表第一は、危険物を6種類に分類しています。
- 火災発生の危険性が大きいもの
- 火災拡大の危険性が大きいもの
- 消火の困難性が高いもの
類別 | 性質 | 性質等の概要 |
第一類 | 酸化性固体 | 固体であって、そのもの自体は燃焼しないが、他の物質を強く酸化させる性質を有し、可燃物と混合したとき、熱、衝撃、摩擦によって分解し、極めて激しい燃焼をおこさせる危険性を有するもの。 |
第二類 | 可燃性固体 | 火炎によって着火しやすい固体又は比較的低温(40度未満)で引火しやすい固体であり、出火しやすく、かつ、燃焼が速く、消火することが困難であるもの。 |
第三類 | 自然発火性物質および禁水性物質 | 空気にさらされることにより自然に発火する危険性を有し、又は水と接触して発火し若しくは可燃性ガスを発生するもの。 |
第四類 | 引火性液体 | 液体であって、引火性を有するもの。引火点250度未満のもの。 |
第五類 | 自己反応性物質 | 固体又は液体であって、加熱分解などにより、比較的低い温度で多量の熱を発生し、又は爆発的に反応が進行するもの。 |
第六類 | 酸化性液体 | 液体であって、そのもの自体は燃焼しないが、混在する他の可燃物の燃焼を促進する性質を有するもの。 |
危険物の製造所等
危険物は、その特性に応じて指定数量が定められ、指定数量以上の危険物は、危険物の製造所等(危険物の製造所、貯蔵所、取扱所)に限られます。
区分 | 内容 | |
製造所 | 危険物を製造する施設(製油所、化学プラントなど) | |
貯蔵所 | 屋内貯蔵所 | 危険物を建築物内で貯蔵 |
屋外タンク貯蔵所 | 危険物を屋外にあるタンクで貯蔵(石油タンクなど) | |
屋内タンク貯蔵所 | 危険物を屋内にあるタンクで貯蔵 | |
地下タンク貯蔵所 | 危険物を地盤面下にあるタンクで貯蔵 | |
簡易タンク貯蔵所 | 危険物を600L以下の小規模なタンクで貯蔵 | |
移動タンク貯蔵所 | 危険物を車両に固定されたタンクで貯蔵(タンクローリー) | |
屋外貯蔵所 | 危険物を屋外の場所で容器等で貯蔵 | |
取扱所 | 給油取扱所 | 自動車等に給油する取扱所(ガソリンスタンド) |
販売取扱所 | 危険物を容器に入ったまま販売する取扱所 | |
移送取扱所 | 危険物を配管で移送する取扱所(パイプライン) | |
一般取扱所 | 上記の取扱所以外の取扱所(ボイラー、地下発電施設など) |
指定数量
危険物の品名ごとに定められている法規制を受ける数量のことです。なお、指定数量未満は、市町村条例の規制を受けます。
製造所等の警報設備
指定数量の10倍以上の危険物を貯蔵または取り扱う製造所等(移動タンク貯蔵所を除く)には、以下の警報設備のうち、1種類以上を設置しなければなりません。
- 自動火災報知設備
- 拡声装置
- 非常ベル装置
- 消防機関に通報できる電話
- 警鐘
製造所等の設置・変更許可
製造所等の新たな設置またはすでにある製造所等の位置、構造、設備等を変更する場合には、事前に市町村長等(設置場所により市町村長、都道府県知事、総務大臣のいずれか)の許可を得なければなりません。
危険物取扱者
製造所等で危険物を取り扱うには、危険物取扱者の資格が必要です。危険物取扱者には、以下の3種類があります。
種別 | 取り扱い可能な危険物 |
甲種危険物取扱者 | すべて |
乙種危険物取扱者 | 第一類から第六類のうち、免状に指定された類の危険物 |
丙種危険物取扱者 | 第四類危険物の一部のみ(ガソリン・灯油等) |
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